最先端環境住宅には、ツバメの親子も住んでいました。

6月19日午前、春日井は玉野台にて催された完成見学会へ行ってきました。
会場は、四方が山に囲まれた閑静な住宅地。
心配されていた梅雨の雨ですが、この日は何とか天気に恵まれました。

これから「玉野台の家」に住むのは、ご主人、奥様、お母様の3人構成のご家族。
自然が好きだというご主人は、土地探しだけで随分時間を費やしたといいます。
玄関には、なんとお施主さんよりも先にツバメの親子が住んでいたのです!

ツバメの親子がお出迎え。
台があるのは、鳥を愛する
お施主さんの計らいだそうです。

『蛇籠』という手法を
洗練させて作られた、石の塀

庭木も、鳥が寄り付きやすい
ものを選んでいます。
「玉野台の家」を手がけたのは、中部大学の田中英紀先生と、らいふくれよんメンバーである笹野直之さんたちのチーム(小誌Life Crayon Vol.1でも「松河戸の家 」で特集させていただいています)です。
「松河戸の家」でもタッグを組んだお二人ですが、「玉野台の家」は、また違ったアプローチを試みたそう。「『松河戸の家』はわりと身近な技術を組み合わせて 作った住宅です。
『玉野台の家』は夏の熱を貯めて冬に使うという画期的な住宅です」と笹野さん。デザインとテクノロジーを融合させた先進的な創環境住宅を一目見ようと、午前 の部だけで約70名近い入場者数になっていました。

学生さんや建築関係者以外に、
ご近所の方も多くご来場されていたのが印象的でした。

さて、では「玉野台の家」のどこら辺がスゴいのでしょうか。 まず、目玉となるのが「季節間蓄熱システム」という方法。
「玉野台の家」の駐車場地下には約30トンの貯水プールが隠されています。「そのプールで夏に貯めた暖かい熱を冬場の暖房と給油に、冬に貯めた冷たい熱を夏場 の冷房に活かし、さらには太陽熱を集めて給油と暖房に利用する」というシステムだそうです。
他にもリビングやオーディオルームには、放射・対流冷暖房システムが導入されています。放射空調とは床暖房のように、床・壁・天井などを暖めたり冷やしたり して冷暖房をする方式で、対流空調とはエアコンのように冷風や温風を使って冷暖房をする方式です。
「玉野台の家」では、エアコンを用いて放射と対流の効果を同時に利用して冷暖房を行います。
では、ざっと見学会の様子を写真でお伝えします。


  • 「玉野台の家」の機械室。

  • システム中枢を説明する田中先生。

  • 地下貯水プールが空だった時の写真です。

  • 太陽光パネルも当然のように
    設置されています。

コントロールパネルが
何やら色んな数値を刻んでいます。

いよいよ、中に入ってみます。
おしゃれなナチュラルモダン風の内観ですが、実は各所に色んな工夫が。「これは田中先生とも共通の意見なんだけど、技術は表に見えなくてもいいんです」と笹 野さん。「設計時は、空間の流れと開放感を意識しました。それこそ木目の流れ方向も丁寧に計画しています。お施主さんが自然素材が好きということもあり、天 然木をふんだんに使用しています。壁は調湿性の高い左官仕上げです」。


  • 笹野空間設計 笹野 直之さん

一階ゲストルーム

  • 「音楽を聞くことが、最高のリフレッシュ」。
    そんなお施主さん、こだわりのオーディオルーム!
    小さい頃の記憶にある『土蔵』のヒンヤリと静かな感じを再現したかったそうです。

  • 天井は、音響を考えた起伏が施されています。

  • 音質へのこだわりは、
    コンセントにまで及びます。

玄関です。奥に見えるのは、傾斜地である
ことを活かしたスキップフロア。

  • もう一つのゲストルーム。木目がおしゃれ!
    (床材は本来、白い素材のアッシュを燻すこ
    とでこの見事な色目に。阪口製材のSパネル
    とのコントラストが目を引きます。)

  • 二階リビングは南向きの窓から
    自然光がふんだんに差し込みます。

  • 窓上からは、天井裏を伝って空調からの
    天井裏全体を冷やすことにより輻射式冷房としている。
    冷たい空気降りてくる仕組みに。

  • ベランダから見ると、ヒサシが絶妙な
    長さで直射日光や雨を遮っています。

ブラインドはハンターダグラスの
ハニカム構造で夏涼しく、冬は暖かく。

  • すっきりとシンプルなキッチン。

  • 来客数が多い時などの
    ための補助的な空調吹出口を設置。

  • 見学者から好評だったのが、このボルト。
    お施主さんが好きな絵を飾る他にも、
    服をかけたり写真を飾ったりと
    工夫次第で用途はいろいろ。
    ちなみに、市販のものを
    笹野さんが選んだそうです。


  • 学生さんたちも熱心に聞き入ります。

収納と思いきや・・・。ガラッと開けると

ここにも何やら機械が。

  • らいふくれよんのメンバーも次々と訪れます。


露天風呂から見上げる夜空は、
星が綺麗なことでしょう。

外に戻ると、偶然お施主さんのお姿が! 折角なので、田中先生、笹野さんを交えてお話を伺うことに。

「一生に一回しかできない何かをしたい」。「玉野台の家」が生まれるきっかけは、そんなお施主さんの想いと田中先生の論文の出会いでした。「だから、最初は どうしても『家』でなければならなかったわけではないんです」と、明かして下さいました。 徐々に完成していく「夢」を見守る過程で、こんな印象を抱いたそう です。
「現場に行くたびに、職人さんたちが本当にいい顔して仕事してるんです。これは先生方の人柄でしょうねぇ。感動しました。結果的に、みなさんに携わっていた だいてすごく良かったなぁと思います」。
しかし先進的なシステムであるがゆえにデータが少なく、コストもまだまだ一般的ではないのが現状のよう。「普及すればコストを抑えた供給体制もできるはず。 もっとシンプルな構造でメンテナンスもしやすい製品が生産できるかもしれない」と田中先生は言います。実際の生活からデータをとるため、家には約250カ所も の観測ポイントがあるそうです。「だからこそ」、とお施主さん。「このシステムはまだまだ手探りの状況なんだろうけど、確立すれば未来のオーソドックスにな るかもしれない。その礎となれたら言う事はありません」。

和やかな空気からは、
それぞれの信頼関係が見てとれます。
また仕事柄、海外出張も多いというお施主さん。ある一つの計画があると言います。「それは、世界のお金持ちを我が家に招待すること。そのためのゲストルーム なんだから。プロジェクトを現実にするためには、スポンサーが必要でしょ?」。そう茶目っ気たっぷりに笑って、ご近所への挨拶回りへと出かけて行かれました 。自分たちの生活エネルギーは、自分たちでまかなう。そんな考え方が当たり前になっているであろう、近い未来。「玉野台の家」が歴史の一ページに名を残す日 がくるかもしれません。せっせとエサを運ぶ親ツバメと、いつか大空へ飛び立つヒナたちを見ながら、そう思った一日でした。これからお施主さんご家族が、どん な暮らしを創造されるのかが楽しみですね。